お客様のお話を丁寧にうかがうことで、
求める住まいの形が見えてくる。
家づくりとは、その形を崩さずに実現することだ。

レジデンス設計部 室長

谷口 雅俊Taniguchi Masatoshi

資格
一級建築士
得意分野
戸建注文住宅/医療施設
経歴
  • 1979年
    • 東京生まれ 広島県育ち
  • 2006年
    • 明治大学大学院理工学研究科建築学専攻 修了
    • 大手ハウスメーカー 入社
    • 設計、商品開発を担当
  • 2011年
    • 三井ホームデザイン研究所 入社
受賞歴
  • 2016年
    • HOUSE OF THE YEAR 専用住宅 総合グランプリ(共同設計)
  • 2017年
    • HOUSE OF THE YEAR 専用住宅 優秀賞
  • 2018年
    • HOUSE OF THE YEAR 非専用住宅 優秀賞

お客様が思い描くイメージに寄り添い、
世界でひとつの住まいをデザインする

高級住宅街に建つ賃貸住宅。若い夫婦を想定し、外観は重厚だが内装はゆったりとしたデザインにした。
外に完全に閉じ、内に開いた家づくり。外から中の様子が全くわからないのだが、それこそがお客様の要望でもあった。

「建物の要望を受けてまず考えるのは、お客様がその要望を持った理由です。お客様との打合せを繰り返すのもそのためのです。そうすることでお客様の真意がわかり、求める家の形が見えてきます」と、エグゼクティブデザイナーの谷口 雅俊は語る。そして、「一度決めたコンセプトは最後まで崩さずに守ることです」と、妥協しない姿勢を強調する。
谷口の守備範囲は広く、注文住宅をはじめ、賃貸住宅やクリニックにも対応できる。規模の大小も問わない。誰がどのような用途で使うのかを考えて建物の形を整えるという意味において、住宅もそれ以外も大きくは違わないと谷口は言う。「大事なことは、お客様の日常や業務をリアルに知ることです」と、お客様に向き合うことの重要性を説く。また、谷口は安易な妥協を看過しない。一つでも諦めるとそこからほころびが見えてくるという。「キッチンにはキッチンの、リビングにはリビングの使い方というものがあります。それは誰もが同じように使っているように見えますが、実はみなさん微妙に違う。その違いをきちんと形にすることがお客様の要望に正しく向き合うということではないのでしょうか」と、自身の姿勢を述べる。

都市部の高級住宅街だからこそ、
緑を独り占めできる賃貸住宅を提案

北面のファサードは窓のサイズを揃えるなど、統一感を持たせている。雨樋も目立たぬように配慮している。
1階の住居にはそれぞれプライベートガーデンを配置した。
若い夫婦をターゲットに想定し、賃貸住宅だがゆったりと暮らせる環境を提案する。緑が見えるリビングもその一つ。

“高級住宅街で1棟8戸の賃貸住宅を”という案件を受けたときも、谷口はまず住み手のことを思い浮かべたそうだ。「高級住宅街らしい、ゆったりとした暮らしを求める方を念頭に置き、“プライベートガーデンと暮らす住まい”というコンセプトが思い浮かびました」と、緑とともに暮らせる上質な賃貸住宅が誕生した経緯を説明する。
1階部分に専用庭という付加価値を与えることで、入居率や収益性の向上も期待できる。谷口は自身のプランをより確実にするため、“賃貸だから”という考えを捨てた。「質の高い暮らしを実現するため、注文住宅を念頭においてデザインしています」と、高級住宅街に相応しい賃貸住宅の形を追求する。例えば、プライベートガーデンにエアコンの室外機など、景観を損ねる物を置かないようにと気遣った。このような配慮はファサードでも徹底されている。「窓やドアをシンメトリーに配置することでデザインに安定感を出し、高級住宅街らしい風格を持たせました。大邸宅と見まがうばかりのシルエットになったと思います」と、谷口は胸を張る。

お客様の希望と正面から向き合った
かつてない“守り”に徹した住まい

門柱の横と奥にシンボルツリーが見える。居住棟は奥まったところにあるので、見る角度がずれると中が見えなくなる。
光を取り入れ、視線は遮る縦長のスリット。施主の意向である防犯性と意匠性を両立させた。
住宅に隣接するカーポート。普段はシャッターが降りていて外とは完全に遮断されている。
吹き抜けのリビングに設えられた大窓。外観からは想像もできない開放的で明るい空間となっている。

印象的だが、住宅らしからぬフォルムの建物もまた、お客様の要望を形にした谷口の作品だ。「堅固な家にして欲しいという要望が第一にありました」と当時を振り返る。「でも中は明るく快適な住まいに、との希望もありましたので、まず周囲を塀で囲うことにしたのです」と話す。奇異に見えるフォルムもここまでの経緯を聞くと、なるほど中に居住棟が隠されているのだなと想像できる。塀で視線を完全に遮ることができたため、居住棟のデザインは大胆かつ自由にできたという。「リビングを吹き抜けにして天井まで届く大窓を設えました。塀越しに入る陽射しがリビングの奥まで届いて、明るく開放感に溢れた空間になっています」と、塀と大窓の組み合わせの妙について谷口が熱く語る。玄関までのアプローチには和風の庭が用意されており、塀の遮音効果もあるのだろう、大通りに面した角地とは思えない静かな空間となっている。
住宅内部は暮らしやすさを考慮して周回動線を採用した。「明るいリビングが生活の中心になるように考えました」と、谷口がプランの意図を伝える。お客様の要望をまっすぐに受け取り、素直に形にしていく谷口のスタイルを体感できる住宅の一つだ。

たとえば、エアコンの配管や室外機の設置場所まで考え抜いて設計する。
お客様の暮らしでこの先必要となるものについて思いを巡らせる。
そうした想像力がデザインを支えていると、考えています。

屋根に影を落とすまでに育ったサルスベリ。窓から見える庭の景色も素晴らしいとのこと。

古いけど形の良い家を買いました。
少しずつ手を入れていくつもりです。

「自宅を購入したばかりで、今はリフォームにはまっているところです」と、谷口が話す。形のきれいな家に出会い、つい飛びついたとのことだ。「衝動買いにも近いですが、エントランスに植わっているサルスベリの木をはじめ、本当に雰囲気がいいんです」と、笑顔を見せる。さすがに大きなところのリフォームは業者に任せるとのことだが、「壁紙を剥がして塗り壁に変えたいところがあって、まずはそこからはじめようと思っています」と、嬉しそうだ。築30年の物件だが、ベタ基礎だったり、背の高いドアが使われていたりと、つくりが凝っていていろいろと楽しめそうとのことだ。