10年後、20年後の暮らしを見据えて・・・
暮らしに心地良さを提供する。
地域とともに育っていく家づくり。
大規模木造設計部
阪本 大輔Sakamoto Daisuke
- 資格
- 一級建築士
- 得意分野
- 戸建注文住宅/福祉・介護施設
- 経歴
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1980年
- 東京都生まれ
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2006年
- 早稲田大学芸術学校 建築設計科 卒
- アトリエ設計事務所 入社
- 住宅・集合住宅の設計に携わる
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2012年
- 三井ホームデザイン研究所 入社
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1980年
- 受賞歴
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2018年
- DESIGN OF THE YEAR 下期特別賞
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2018年
お施主様のこれからを踏まえ、
日々の暮らしをデザインする
自身のこだわりについて問うと阪本は、「そうですね」と少し間をおき、「10年後、20年後、街並みに溶け込み風景の一部となる家づくりですね」と話し始めた。多くの注文住宅を手がけてきた経験からだろうか、「そのためにも1本でも緑があるといいですね。風にそよぐ緑は風景をつくるだけでなく、季節のうつろいを人々に伝えてくれます」と、緑や植栽の魅力も訴える。
実際に設計が始まり、形が見え始めてくると施主からの要望も熱を帯びてくる。「あれもやりたい、これも試したいのが家づくりの楽しみですから」と、その思いに理解を示しつつも「強い要望に流されそうなときほど一度踏みとどまり、最初の家づくりのコンセプトをお施主様とその都度共有するようにしています」と、阪本は努めて冷静な態度で対応する。そしてコンセプトへの原点回帰を繰り返しながら仕上がりイメージを施主と固めていく。「優先順位もあるので、なかには難しい要望もあります。そういうときほど一度は受け入れ、どうしたらできるか、別の方法はないのかと考えるように心がけています」と、阪本は施主の気持ちに応えることを第一に考え、そのための手間を惜しまない。
家事の動きや暮らしのリズムを踏まえ
生活者の視点から間取りを提案
緩やかな傾斜地を歩くこと数分。丁字道路の角地に緑が映える白亜の邸宅が見えてくる。阪本の手による注文住宅だ。この敷地は角地で、北西に面する2方向道路のどちらとも幅員が広く、周囲から注目を集めやすいという特徴があった。そのため、歩行者や周辺建物からの視線を避けるため、玄関およびアプローチの配置には特に気を遣ったという。北側は既存の生け垣を残し、新たなシンボルツリーやグランドカバーをあしらっている。「外出時や帰り際に、風や季節のうつろいを感じることができるように、外構一体とした家を計画しました」とその意図を説明する。
南面は隣家と近接するため、採光を考慮してLDKTを2階に設えた。「明るく、視界も開けた空間になりました。テラスにはウッドデッキを敷いており、二つ目の庭としてリビングやダイニングから気軽に出られます」と、明るさだけでなく使い勝手も考え、洗面などのサービスゾーンを介した回遊動線を採用している。「お施主様の使いやすさが一番ですから」と、ここでも追求するのは使いやすさだ。特に水回りは生活動線や家事の流れを施主と相談し、設計に反映させている。「お施主様の家にかける想いが非情に高く、外観やインテリア、外構をトータルで何度も打ち合わせし、共有を重ねた結果、今にいたりました」と、完成までの経緯を阪本は振り返る。
毎日を快適に過ごすだけでなく、
将来の暮らしも見据えた住まいを
道路に接する二面のファサードをどう造るかは当初からの課題だったという。「間口が長く、幅員の広い北側道路に面する北面には優しい光を取り込む大窓を作ることを提案しました」と、阪本は基本方針を決める。建物の形状から、暗くなりがちな北側や中央部への配光を考えてのことだ。「北側の階段をコの字型の吹き抜け構造にして、高さのある大窓を北面に設置しました」と、大胆だが印象に残るファサードになった経緯を明かす。北面の大窓から差し込む陽光が、吹き抜けの階段スペースを抜けて玄関を柔らかく照らし、さらにリビング北側の光量不足の解消にもつながっている。
“隠す収納を”も今回のテーマの一つ。阪本は「すぐに取り出せ、すぐに仕舞えるようにと、キッチンや洗面台、階段下など、家のいたるところに必要最小限の収納スペースを配置しました。ライフスタイルの変化にも対応できます」と分散収納を提案した。阪本が訴求する、将来の暮らしを見据えた家づくりの一端をここにも見ることができる。
形をトレースするのは記憶の定着、
そのときの状況や気分まで思い出せるのがスケッチの面白さです。
「絵を描くことは好きですね」と、阪本が言う。カバンに忍ばせたスケッチブックと簡単な画材を使い、その場で仕上げるのだと教えてくれた。「実物を見ながら描くことが多いです。場の雰囲気や状況、自分が考えたこと、感じたことをまるごと全部描ける感じがあって、そこがいいんです」と、笑う。「この絵を描いたときは」と、絵の説明をはじめる阪本は実に楽しそうだ。写真を撮る感覚で描いたのだろう、メモ代わりのような絵も見せてくれた。「人によっていろいろな記憶の定着があるように、私は描いて定着するタイプだと想います。今は子育てや仕事が忙しくて大変ですが、落ち着いたらまた描きはじめるつもりです」と、多忙な近況を嬉しそうに話した。
家は完成したときからあらゆることが始まっていきます。
日々の暮らしのなかでの発見や喜びを家族で共有できることを願い、
時を経て街並みの風景となり、いつまでも大切に想える住まいづくりを目指します。